この映画が出来るまで

この映画は取材途中に亡くなった少女カリーナ(仮名)に捧げます。

この映画は劇映画でありドラマです。ドキュメンタリーではありません。
日本人監督スタッフと現地ベラルーシ、ロシア人スタッフと共に撮影した劇映画です。
これは初の試みです。 幅広い年齢層の方々にみて頂きたくてドキュメンタリーではなく、
劇映画として制作しました。
劇映画ですが現地取材をしっかりとして真実を映画化出来たという自負はあります。
ベラルーシ国の美しい自然。しかしそこには見えない放射線で冒された大地がある悲劇。

2003年映画監督今関あきよしが最初にこの映画を撮ろうと思ったきっかけは、
車の中で何気なく 聞いていたラジオのDJの声だった。チェルノブイリ原発事故のことを語る内容。
今もまだその被害が続いていることに驚くと同時に、10年以上前にロシアの子守唄を取材する
ドキュメンタリーの撮影で訪れたロシアの田舎町の美しい風景を思い出していた。
そして、それが今関の中で共鳴し始める。 「あの地でチェルノブイリ原発事故のその後の悲劇をテーマとした作品を撮りたい」
それが出発点。とはいえ、前途は多難だった。

誰の意思にも左右されず自分の撮りたいように撮ろうと考えた今関は、あえてスポンサーを探すことを しなかった。
いわゆるインディーズ、自主映画。 問題は山積み。 どうやってチェルノブイリまで行くのか、行けたところで撮影など出来るのか。
友人知人、関係各所に連絡を取り、可能な限り会って話をし、こちらの意図を説明した。 それはやがて日本人のみならず、ロシアや
ベラルーシの人々の心をも動かして行く。 現地コーディネーター、通訳、機材を貸し出していただける企業、各国の大使館には何度も足を運んだ。 だた、通訳に関してはチェルノブイリ原発にも行く事を説明するとNGを出してくる方も多く 最後まで難航した。

2003年6月、ようやく現地取材にまでこぎつける。
ベラルーシ国の首都ミンスク、被害の多いゴメリ、血液学センター、居住禁止区域、圧倒的に美しく 広大な自然。
そして、やっとの思いで辿り着いたチェルノブイリ原発の4号炉300メートル前。 手元のガイガーカウンターの針は止まることを忘れて、
激しく揺れた。 さらに、思っていた以上にベラルーシには厳しい現実が存在していた。
取材で強く印象に残ったのはチェルノブイリ原発事故によってバラバラにされてしまった家族が 多いこと。
それまでの生活が全て壊され、生まれ育った土地を離れなければならなかった人たちの心の痛みは、 シナリオにする際に重要な
ファクターとなった。 その一方で危険と分かっていながらも、貧しさやその古里への愛着からその土地に残って生活せざるを得ない
人たちもいる。

帰国後、取材を元にストーリー原案、シナリオ化し、ロシア語に翻訳し現地のスタッフに送られた。
現地スタッフの意見なども取り入れ改訂を繰り返し決定槁となった。
次に今関はキャスティングの為にロシア、ベラルーシに再び飛んだ。 大人のキャストは次々と決まって行くが、主人公のカリーナがなかなか見つからない。 繰り返されるオーディション。
モスクワにある小さなコーディネーターの事務所のキッチンで最終オーディション。
ひとり淋しく食事をするというエチュードを即興で演じる内容。
帰国最終日、帰国の飛行機の便ギリギリでついにカリーナと出会う。
今関はこう語る「この子との出会いがこの映画の幸福の全てかも知れないほど素敵な出会いだった」 念願のクランクイン。

8月の広大で緑豊かなベラルーシの田舎や都心部での撮影。 12月の極寒の中での撮影。 そんな中、取材で出会ったひとりの少女が亡くなった。 その子は笑顔だった。 原因不明の血液ガンに冒され、顔面も歪み、スタッフも目を合わせるのが辛い姿でした。
でも、ずっと笑顔でした。「ごめんなさい」 その後、お墓を探しましたが見つかりませんでした。
「ごめんなさい」 2004年完成。 当初、この映画タイトルは『少女カリーナに捧ぐ』。
完成当時、遠い海の向こうの知らない国の事故、被害にあまり関心を示す人もおらず、公開はなかなか決まらない。
正にチェルノブイリ原発事故の話題は風化しつつあっつた。

2010年、翌年にチェルノブイリ原発事故から25周年となることをきっかけにと、公開する為の活動を再開する。
タイトルを『カリーナの林檎チェルノブイリの森』に改題。
再度、現地チェルノブイリへの取材、いまだその被害、悲劇は続いていることを改めて知る。 最新の映像にすべく新たな撮影を原発やその周囲にて敢行、その映像を加えつつ、 2011年公開版の再編集作業のスタートを切った。
2011年に入り、チラシやポスターなどの宣伝材料デザイン制作開始する。
その矢先、2011年3月11日震災と共に福島原発のメルトダウン。チェルノブイリ原発事故のレベル7と 同等の放射線災害となる。
絶句。 公開がまた延期となりそうな気配の中、公開の為の活動続行。 むしろ今、公開すべき映画なのでは…の思いで現在に至る。



チェルノブイリ放射能汚染地域
入所許可証

ベラルーシ共和国放射能汚染図

人のいなくなった村での取材中
スタッフスナップ

「カリーナ」の木の実

撮影に使ったおばあちゃんの家で
記念撮影

※写真クリックで拡大表示